ソーシャルワーク

精神科病院の身体拘束ー知ってほしい。増えているという現状

この記事は、多くの精神科病院で実施されている身体拘束(患者さんの体をベッドに固定すること)について、私の疑問を書きます。死亡事例もあるけれど、年々実施数は増えている。この現状を多くの方に知ってほしいです。

こんにちは。はまだです。

ソーシャルワーカーとして精神疾患を持つ方々と関わっていると、必ず聞くのが精神科病院へ入院していた時の話です。

一番体調が悪い時に入院を経験するので、皆さんの思い出は良いものではありません。

中でも、自傷他害の恐れがある(他人や自分を傷つける可能性がある)と医師に判断されると、隔離室で1人で過ごすことになったり、体をベッドに固定される身体拘束を行われたりします。

私は隔離されること、身体を拘束されることに非常に強い疑問を持っています。

今日は、その身体拘束について書きたいと思います。

参考文献はこちら。

著者の長谷川利夫先生(杏林大学教授)は、「精神科医療の身体拘束を考える会」を立ち上げ、様々な場所で活動されています。

精神科病院における身体拘束とは

身体拘束の方法

ベッドに拘束されることが主です。

ベッドで仰向けに寝て、お腹、手首、足首をベルトで固定されます。5点拘束とも呼ばれます。手足の自由はききません。

5点拘束プラス肩ベルトの装着もあります。この状態は、ベッドから起き上がるのは難しい状態です。

身体拘束する時

精神科病院で患者さんを身体拘束するのは以下の時です。

  • 自殺企図があったり、自傷行為が著しく切迫している場合
  • 移動または不穏が顕著である場合(すごい動いたり、ソワソワして大変なことになりそうな場合)
  • それ以外の精神障害のために、そのまま放置すれば患者さんの生命に危機が及ぶおそれがある場合

つまりは、「誰かに大きな危険がある時」です。

実際にあると思います。患者さんが混乱して、誰かもしくは自分を傷つけてしまいそうな時。いわば身体拘束は最終手段であります。

でも、その最終手段の件数、多すぎませんか?

日本の身体拘束の状況

日本の精神科病院での身体拘束は年々増えている。

日本の精神科病院での身体拘束の数は

2003年ー5,109件

2008年ー8,057件

2010年ー8,930件(ここまで、長谷川先生のデータ)

2016年ー10,933件(2018年の西日本新聞医療面より)

13年で、5000件から10,000件以上に。凄まじい伸び率です。

長谷川先生は、今後は入院患者の高齢化も進んでいくし認知症患者も増えることから、拘束の件数は増えていくのではと書いています。

一ヶ月以上拘束される人がたくさんいる。

1999年に厚生労働省科学研究(国から補助金が出て行う調査)が示した結果では

身体拘束を受けている患者768人の拘束されている時間は

「1ヶ月以上」の回答が511人でした。

1ヶ月以上、ベッドの上で

手足の自由がきかないまま

トイレも自分で行けないまま(オムツをはかされます)

水も自分で飲めないまま

天井を見て、時間を過ごしているのです。

1999年のデータというのは少し古いですね。近年、身体拘束時間のデータというのは正式に公表はされていません。現在、どれくらいの人が長期で拘束されているのでしょうか。今後もっともっと調べます。

諸外国との比較

諸外国はどうかというと、同研究で身体拘束を受けている患者の平均時間の国際比較があります。

身体拘束を受けている患者の平均時間

米国ペンシルバニア州ー1.9時間

オーストラリアーなし

ドイツー9.6時間

米国カルフォルニア州ー4時間

フィンランドー9.6時間

スイスー48.7時間

スイスを除いては、10時間もいかないのです。

スイスの48.7時間だって、我々の拘束期間1ヶ月以上には到底及びません。

身体拘束による死亡事例

最近一番大きなニュースになったのは、2017年に神奈川県の精神科病院で亡くなったニュージーランド人男性の件ではないでしょうか。

27歳の彼は、英語教師といて日本で働いていました。精神的に体調を崩し、やむなく入院。暴れることなく、おとなしく治療に従っていたにも関わらず拘束されていたと報道されています。

彼が亡くなったのは、拘束後10日目。体が動かせなかったことによる、いわゆるエコノミー症候群で亡くなったといわれています。

ハートネットTVで彼の特集をしていました。ニュージーランドには身体拘束という処置が存在しない。彼が入院したのが日本だったことが、私はとても悲しかった。

他にも、最近遺族の訴訟によってニュースに取り上げられたケースでは

2018年 石川県内の精神科病院にて男性患者(40)が拘束6日目で亡くなったニュースや

2018年 東京都内の精神科病院にて女性患者(54)が拘束8日目で亡くなったニュースがあります。

どちらもエコノミー症候群。

それ以外にも、無理やり動こうとしてベッドから落ち、腰のベルトによる内蔵圧迫で亡くなったり、

自分で吐いたものが喉に詰まって亡くなるケースもありました。

終わりに

今回、精神科病院の身体拘束について書きましたが、

全ての病院の先生や看護師さんが悪いとは思っていません。

現場で患者さんの安全を確保しなくてはいけないことや、危機的状況があることも理解しています。

でも、拘束しなければ安全を守れない病院のシステムに疑問を持っています。

看護師が少なければ少ないほど、拘束しなければいけない状況は出てくるだろうし、もっと言えば、そんなにたくさんの患者さんを入院させなければいけない社会のシステムにも疑問があります。

話を広げすぎると大変だから今日はここまで。

私が活動する神奈川精神医療人権センターのHPでも、いろんな情報を発信中です。(私が書いているわけではなく、ちゃんとその道のプロの人が執筆してます。笑)見てねー。

はまだ

 

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